Special Feature | 探究スペシャルコンテンツ

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千駄谷小学校

「おしゃれになりたい!」から始まった、色と素材の探究。 地域企業との出会いが広げた、ファッションへの問い

小学1年生の頃から洋服が大好きだったという渋谷区立千駄谷小学校の藤門 和(ふじかど なごみ)さん。3年生で始まったMy探究では、「ファッションについて調べよう」をテーマに掲げ、地域のアパレル企業との出会いをきっかけに、色の組み合わせの研究や着せ替え人形の衣装制作、さらにはオリジナルの”ファッション図鑑”づくりへと学びを深めていきました。

好きなことを起点に、自分で問いを立て、調べ、手を動かし、最後はクラスメイトの前で発表するまで——。「おしゃれになりたい」という素朴な想いが、探究のプロセスを通じてどのように形になっていったのか。藤門さん本人にお話を伺いました。

「自分で選びたい」が芽生えた、小学1年生の頃

ファッションに興味を持ったきっかけを教えてください。

藤門さん 小学校に入ってからです。幼稚園のときは制服だったんですけど、小学校では自分の好きな服を着られるようになりました。最初はお母さんが決めてくれていたんですけど、途中から自分で選ぶようになりました。

 

3年生 藤門 和さん

1年生のときに雑誌やテレビで見て気になった服を自分から指さすようになり、自分から「これが欲しい」とだんだんと選ぶように。お出かけの際には前日の夜からコーディネートを考えるほどで、時々妹さんの服選びまで手がけることもあるといいます。

My探究計画の冒頭には、「デザイナーさんになりたい」という言葉が記されています。自分の「好き」がはっきりしていたからこそ、My探究のテーマ設定も自然な流れで決まっていったようです。

地域のアパレル企業との出会いが、探究の扉を開いた

探究を進めるうえで、転機になった出来事はありましたか?

藤門さん 好きなブランドがあって学校にそのブランドのデザイナーの方が来てくれて、たくさんお洋服も持ってきてくれたことです。一人ひとつ質問を考えて聞けたんですけど、私はファッションの種類とその組み合わせについて聞きました。

千駄谷小学校の学区にあるアパレル企業(株式会社ビームス)が、地域貢献の一環として学校と連携。ファッションに興味のある児童がプロのデザイナーから直接お話を聞き、コーディネートを体験するワークショップが実現しました。

ファッションの種類や組み合わせについて、どんなことがわかりましたか?

藤門さん デザイナーさんに「色相環」というのを使うとコーディネートに役立つよと教えてもらって、色の組み合わせがすごく気になったので、それをもっと調べてみようと思いました。図書館に行っていろんな本を調べたら、似合う色がわかるようになったんです。それで、自分の好きな青に合う色を何個か書き出して、一番気に入った組み合わせで衣装を作りました。

プロのデザイナーから教わった「色相環」をヒントに、藤門さんは図書館へ足を運び、ファッション図鑑や色の組み合わせの本、世界の柄についての本など、さまざまな資料を自分で探して読み込んでいきました。インターネットやYouTubeではなく、図書館の本を中心に情報を集めたのが藤門さんの探究スタイルです。

「調べる」から「つくる」へ。着せ替え人形の衣装に込めた色の組み合わせ

実際に衣装を作ったそうですね。どうやって作りましたか?

藤門さん 自分の好きな青に一番合う色はピンクだなと思って、青とピンクの組み合わせで、お人形の服を作りました。生地を買って、家で作っているうちに、最初は半袖にしようかなと思っていたんですけど、作りながら「やっぱりこっちのほうが可愛い」って変えていって。自分で作りながら考えていって、できたのがこれです。

オリジナルの衣装は、布を切って布用テープやボンドで工夫して使って仕上がりました。以前からさまざまな素材で洋服づくりを楽しんできた経験をいかし、今回は調べた色の組み合わせをもとに、着せ替え人形の衣装を制作しました。調べて、考えて、自分の手で形にする流れが、藤門さんの探究では自然につながっています。

6つのファッションテーマを自分でまとめた"図鑑"づくり

最終発表ではどんなことを発表しましたか?

藤門さん 最終発表は、黒い画用紙でアコーディオン形式にまとめたオリジナルの”ファッション図鑑”を制作しました。ちゃんと伝わるかどうか、心配なところもありました。最初に6つのテーマをそれぞれ説明して、最後に「この中でも一番いいと思ったのはブロケットコアです」と発表しました。ガーリーとカジュアルがミックスされているところが可愛いなと思ったからです。本で見たのが可愛くて、発表の日は実際にそのコーディネートを着て発表しました。

発表会当日はコーディネートを再現。

藤門さんは、図書館で借りたイラストレーター向けのファッション図鑑などをもとに、ストリートやアウトドアミックスなど6つのファッションテーマについて、それぞれの特徴やおすすめアイテムを整理。たくさんの本から得た情報をそのまま写すのではなく、「このファッションにはこのアイテムが似合う」「こういう印象になる」といった自分の視点で取捨選択してまとめ上げたのが、この図鑑の特徴です。

学習発表会でも広がったファッションの探究

My探究での学びは、学校行事にもつながっていきました。年度末の学習発表会では、担任の先生の声かけで同じアパレル企業が再び協力。企業からニットやシャツ、パーカー、スカートなどさまざまな衣類が提供され、3年生がリメイクファッションに挑戦する機会が生まれました。

藤門さん デザイナーさんのお話を聞いて、いろいろお洋服とかがあって、自分も作ってみたいなって思って。昔の子どもの頃のぬいぐるみとかも使って、スカートもいろいろ作りました。

藤門さんは、サイズが小さくなったニットワンピースをベースにスカートを組み合わせたリメイクに挑戦。近所で開催されていたリメイクファッション展示からもヒントを得ました。

藤門さん ダンボールの服とか浴衣とか、そういういろんな服を見て、「じゃあ私だったらこうやってみようかな」みたいな、ヒントになりました。

本で調べるだけでなく、展示やまちの風景からもインスピレーションを得て、自分のデザインに活かしていく。原宿・千駄ヶ谷という土地柄ならではの探究が生まれていました。

「好き」から広がる、探究の力

My探究を振り返って、藤門さんのふりかえりシートには、「絵がちゃんとかわいくかけるかふあんだったけど、ちょうせんしていい絵がかけました」「ちょうせんする力がつきました」との言葉が残されています。

家庭での様子からも、変化は感じられたようです。好きなことに対して「何をゴールにするのか」「何を調べるのか」を自分で順序立てて考えられるようになったことが、My探究を通じた一番の成長でした。好きなことはたくさんあっても、それをまとめて誰かに伝えるという経験は、藤門さんにとって初めてのことだったといいます。みんなの前で発表してやり遂げた経験を通じて、「好き」を自分の力で形にできるという手応えが、たしかに生まれていました。